カウンタ設置日:2004年3月8日
思い出
最終更新日:2004年5月11日


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 ■このページは、ラフコリーのブリーダーになる以前の「コリー達との思い出」を綴った
  エッセイ集です。


 (注)YAHOO検索等で、このページを訪れた子犬をお探しの方は、「出産情報」の
   ページを御覧下さい。





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   2002年7月UP  濡れ衣」  「同類  

   2002年8月UP   犬は考える  

   2002年9月UP    他所(よそ)がいい  

   2002年10月UP   美味なるもの  

   2002年11月UP   水入れ攻防戦  



 タイトル:濡れ衣

 父がまだ今より健康で、毎日ノエル(コリー♀大柄)を連れて、
 朝の散歩に出かけていた頃の話です。父とノエルの散歩は、
 早朝に海岸の堤防に沿って歩くというものでした。

 そのコースの突き当りの左手に、平屋の1戸建てが10軒ほど
 集まった、地元では、“老人村”と呼ばれる隠居老人の保養所が
 ありました。

 ある朝、ノエルを連れ散歩に出かけた父が、なにやら赤い顔を
 して鼻息荒く、普段より早い時間に帰って来ました。

 「あれぇ?どうしたん?」と聞くと、
 「老人村でな、どっかのオジイが畑で草むしりをしよったんじゃ、」
 (方言丸出しですが、臨場感重視の為、あえて共通語に翻訳は
 致しません。)
 「それがの、ノエルを見るなり、『クソさせるなー!これしたんは、
 おまえの犬じゃろがー!』と怒鳴るけんの、
 『うちのは、そんな小さいのなんかせんわい!』ちゅうて、言うて
 やった!!」
 「ハァ?」

 妙な“クソ自慢”などしなくてもいいのに・・・と、私はその時
 思いました。
 年甲斐も無い、とんだ年寄り同士の口論でした。



 タイトル:同類
 
 私は、2頭目に飼ったセーブルのサリーを、ショードッグとして
 大成させようと、意欲に燃え、馴致の為に、あちこちへ同伴して
 いました。当時は、乗馬クラブに、まだ籍を置いていたので、
 サリーを伴い、週に何度か足を運んでいました。

 そのクラブへ、ある時、とても美しいニューハーフが、お二人、
 入会してきました。

 それは、私が、両側から馬達が、にゅーっと顔を出す、薄暗い
 厩舎の外の手入れ場で、騎乗後の馬のひづめの泥を、先を細め
 水圧を上げたホースの水で、洗っている時に起きました。

 乗馬のインストラクターとしては珍しく、がっちりとした体格の
 30歳過ぎの先生が、その2人に厩舎を案内している時、
 ふと、立ち止まった美人のオサムちゃんが、
 「ネェ、センセッ!この、なんとか馬って、何のことぉ?」と、
 馬房の前にぶら下がった、各馬の紹介を書いた30cm四方の
 板を見ながら、その三浦友和に良く似たインストラクターに
 尋ねました。

 「ああ、それですか。センバと言うんです。“玉抜き”の事ですよ。」
 「ぅまあっ!じゃあ、私達とおんなじねぇ〜」オーホッホッホッ・・・と
 裏返った声で、笑い始めました。
 私は、危うく持っていたホースを落とし、辺りに水を撒き散らす
 ところでした。



 タイトル:犬は考える

 ストンとノエルは着地しました。高さ93cmの垂直障害を
 たいした助走も無しに、飛び越しました。
 後は転がっているダンベルを拾って、また飛び越して
 私の元へ戻れば良いだけでした。

 私はノエルを連れ、前夜の22時出航のフェリーに乗り込み、
 早朝5時に入港後、高速を走って、CDXを受験に来ていました。
 CDX、憧れのコンパニオンドッグエクセレント。この障害飛越
 ダンベル持来は、1回の声符しか与える事ができず、
 失敗は許されませんでした。
 それなのに・・・

 ダンベルをくわえたノエルの足が止まりました。
 1秒、2秒、3秒・・・私の目を見たまま動きません。
 『ソレヲ飛ベバ良イノヨ。早ク飛ンデ。早ク!』
 私は、必死の思いで念を送りました。
 でも、ノエルは、自分が飛ぶ事になっていた障害をチラと見やり
 おもむろに障害から離れて行きました。
 ゆっくりとした足取りで、大きく迂回して、平然と私の元へ
 戻って来ました。

 オシマイです。もうこれで失格です。何の為に、毎日毎日、
 朝昼晩と練習してきたのでしょう。
 15cmの高さから始め、3cmずつ高くしてゆき、何ヶ月もかけて
 やっと93cmを飛べるようになったのです。
 うちでは95cmだって飛べました。
 なのに、コイツは〜!!

 往復のフェリー代3万円、高速料金1万円。どうしてくれるのよ!
 私の頭は、ぐつぐつと煮えたぎり、握り締めた拳の中で、
 爪が皮膚に食い込むのが分かりました。
 ありったけの力を目に込めて、私がダンベルを受け取るのを
 座って待っているノエルを、キッと睨みました。
 そして、逆上した私は、わざとそのダンベルを受け取らず
 ノエルを睨みつけたまま、その場に立っていました。
 すると・・・

 何を思ったのでしょう。ノエルは、スコアボードを片手に、
 私の後方5mの位置に立っていた審査員の所へ歩いてゆき、
 正面に停座しました。顎を上げ、ダンベルを差し出しています。
 「悪いね。僕が受け取る訳にはゆかないんだ。」

 その様子を見ていた、ギャラリーの中の若いカップルの
 短大生風の女の子が、
 「わっ、カワイイ」と、言い終わるか終わらないかのうちに、
 ダンベルを審査員の足元に放り捨てたノエルは、
 リングの周りに張り巡らしたロープ越しに、のけぞる女の子に
 抱きついていました。
 『・・・赤っ恥・・・』
 私の脳裏に浮かんだのは、その一言のみでした。


 (モデルは凪です)



 タイトル:他所(よそ)がいい

 
私の犬舎には、2頭の種牡がいます。
 コリーのオスは他犬種と異なり、かなり淡白で、発情期の牝が
 傍に居るからと言って、物を食べなくなる事もなければ、
 鼻血ブーになる事もありません。御飯は御飯、アレはアレと
 分けて考えているかのように、交配期間も、しっかり食べます。
 でも、自然交配で、犬同士に任せて交配が上手くいく事はなく
 9割がたが、介添えを必要とします。

 うちでは交配の際、プロの介添えの男性に来て頂いています。
 彼は、私の中学時代の同級生で、普段はペットショップ専門に
 子犬を販売する繁殖業者として、生計を立てています。
 繁殖方針は私とは全く異なりますが、介添えや出産に関しては
 桁外れに経験豊富ですので、交配は任せ切っている状態です。

 と言っても、交配の最中は、メスがオスの大切なモノを咬まない
 ように、マズル(口吻)を紐で縛ったメスを、私が、動かぬように
 押えておき、彼が片膝を地面についた状態で、メスの横につき、
 立てた方の膝で2頭の体重を支えながらモノを的へ導くのです。

 こういう事に女が関与していると聞くと、喜ぶ親爺がいますが、
 実際の現場は、汗だくで、それどころじゃないのです。
 メスはジタバタ。毛は絡む。オスの足元が滑る。外玉になって
 しまい外れそう・・・犬は1発勝負ですから、失敗すれば精子が
 たまる翌々日まで、待たねばなりません。それでは、肝心の
 交配適期を逃します。人間ほど、お手軽ではないのです。

 しかもコリーはナイーブですから、メスにひどく拒絶されて、
 咬まれたりすると、2度と乗ろうとしなくなる場合もあります。
 ましてや、初めての場所で、初対面のメスに乗らせるなど、
 とんでもない事です。

 その事を、久々に訪ねて来た、室内犬のメスを飼っている
 友人に話すと、
 「へ〜!そうなの?オスを送るんじゃないの〜?!」と、驚き、
 「ええっ!他所だとオスが萎縮するの〜〜〜?!」と、更に
 驚き、自宅に帰ってから、奥様を亡くされてから夕食を共にする
 機会の多くなった、彼女のお父様に話したそうです。

 彼女のお父様は、いわゆる地元の名士で、若い頃は、
 “英雄色を好む”という諺に忠実な方でした。
 そのお父様が、おっしゃいました。
 「ほう、そんなもんかのぅ。お父さんは、他所がええがのぅ。」


(種オス:カナダCHヒューイ)



 タイトル:美味なるもの

 やっと当犬舎にも交配シーズンが到来しました。1頭また1頭と
 ヒートが始まりつつあります。これから交配、出産と、牝犬の
 管理に気が抜けない日々が続きます。

 そして無事に出産を終えれば、何があろうと子犬最優先での
 生活になります。子犬に病気が移る事を恐れ、成犬達の散歩も
 極力控え、もっぱら運動場でのボール遊びが中心になります。

 当然、成犬達にはストレスが溜まりがちになり、特に授乳中の
 牝は、一切外出をさせなくなるので、ストレスのはけ口が、
 食べ物に向く場合もあります。授乳中なので、いくら食べても
 食べ足りないのでしょうが、前回のお産では、凪は、出産直後に
 とんでもない物を食べてくれました。

 私は授乳時以外は、圧迫死の防止と、母犬が来客の気配で
 急に立ち上がり子犬を怪我させないように、母子を別々に
 します。子犬の入った保温箱の隣りに置いたバリケンの中に
 凪は居ました。

 2日遅れのミリオンの出産の翌日で、私は疲れ切った状態
 でした。2時間毎の授乳の度に、保温箱から赤ちゃんを出し、
 母犬の乳首につけてやります。その間、離れずに監視し、
 お乳が上手く吸えない子犬は、よく出る乳首へあて、母犬が
 立ち上がらないように、前後肢を押えつけているのです。

 2胎で12頭の子犬と成犬達の世話で、疲労は溜まって
 いました。そんな中で、凪の強烈な下痢が始まったのです。

 バリケンから出してくれと騒いでいるのが分かりましたが、
 ミリオンの方に付きっ切りでしたので、どうせ焼きもちだろうと
 思い、放置しました。それから暫くして、凪のいる部屋のドアを
 開けたとたん、異様なほど臭い匂いが鼻をつきました。

 「やっだ〜下痢!」
 凪はバリケンから出すと、一目散に外のトイレへ直行しました。
 バリケンの中はドロドロの粘液便だらけでした。
 そして、咬み破られた貼り付けカイロが転がっていたのです。
 「ええっ!なんで〜?」
 私は凪のゲテモノ食いに呆れ、苛立ちました
 「よりによってこんな忙しい時に・・・」

 凍える2月の真夜中の3時に、バリケンを外に出し、水で洗って
 消毒液をかけました。数日間、凪の下痢は続きました。
 授乳中ですので抗生物質は使えません。ビオフェルミンを飲ませ
 食事を極端に減らさなきゃ下痢は止まりそうも無い。
 でも、低カルシウム血症にならないように栄養を与えねば
 ならない。軟便で汚れた毛を頻繁なトイレの度にきれいに
 消毒しなければ、子犬達の腸に大腸菌が異常繁殖してしまう。
 生まれて間もない子犬の下痢は命取りです。

 ただでさえ時間が無いのに、余計な手間をかけさせてくれ、
 自分の不注意とは言え、凪に、ひどく腹が立ちました。

 そう言えば、数年前、2度のエコーと触診で不妊と言われた為
 あっさり諦めて、食事も増やさず、安静にもさせず、好き放題に
 遊ばせていた凪が、しきりに土を掘り起こして食べ始めました。

 芝生を植えようとして撒いた園芸用の土でした。芝生は犬達の
 せいで、跡形も無く消え失せていましたが、土は残っていました。
 その土を食べていたのです。後日、妊娠だと分かり、食事が
 足りず、空腹で、仕方なく土を食べていたのだろうと、その時は
 思いました。

 でも、今回は十分な食事を与えていたのに、なぜカイロを
 食べたのでしょう?私はいぶかりながら、カイロの成分表示を
 見ました。

 鉄粉、水、バーミキュライト、活性炭、塩類・・・
 アッレ〜?どこかで聞いたような見たような・・・バーミキュライト。
 私は、物置へ飛んで行き、園芸用土の袋の成分表示を
 見ました。赤玉土、ピートモス、バーミキュライト・・・
 これだったのです!これが、凪の大好きな風味だったのです。
 分かったとたんに、なぜか腹立たしさは消えてしまっていました。


 

 (美食家の凪)



 タイトル:水入れ攻防戦

 
凪が我が家に来たのは生後52日でした。ベテラン繁殖者の
 手で育てられた、発育の良い元気いっぱいの、月の輪熊の
 ぬいぐるみのようなトライの女の子でした。
 「いつもイタズラをしては母犬に叱られています。」と
 育てた方は、おっしゃっていました。

 先住犬達にも受け入れてもらい我が家の一員になった凪は、
 子煩悩なセーブルの4歳のメスの後をついて回りましたが、
 4歳と5歳のオバちゃん達には、ゆったりと過ごす時間も必要
 でした。凪は、オバちゃん達がかまってくれないと、せっせと
 運動場の中の木の枝や水入れを相手に遊び始めました。

 当時は、コの字型の家の壁3面を利用し、残り1面には
 高さ180cmのフェンスを張り、植木や岩ごと囲い、3坪ほどの
 小さい屋外運動場としていました。そして壁の1面にはベランダが
 付いており、その下が陰になっていたので、日向水にならない
 ように、その陰の部分に水入れを置いていました。

 退屈をもてあました凪は、その水入れに前足を突っ込む遊びを
 始めました。そのうち、突っ込んでいるだけじゃ物足りなくなって、
 ひっくり返して水入れの縁を噛み始めました。

 その頃は、ステンレスではなく、直径20cmの円筒形の
 タッパーウェアを犬達の水入れとして使っていました。
 そのプラスチックの噛み心地がいたくお気に召したらしく、何度、
 犯行現場を捕らえて叱ってみても効き目はありませんでした。
 噛むのは子犬だから、こちらも譲歩するとしても、辺り一面
 水浸しにしてくれるのと、他の犬達が水を飲めなくなるのとが
 非常に困りました。

 そこで、私は一計を案じました。円筒形のタッパーに2箇所
 穴を開け、紐を通し、ベランダの脚の部分に縛り付けました。
 成犬ではなく、まだ生後2ヶ月の子犬だから、これくらいで大丈夫
 だろう。もうひっくり返せないだろうと、私はタカをくくっていました。

 ところが、ほんの10分後、運動場を覗いてみると、紐付きの
 タッパーを誇らしげにくわえ、嬉しそうに歩いている凪を発見。
 「コッラー!凪!」と、水溜りをよけながら、足元が泥だらけの
 凪を捕まえました。タッパーを鼻先に押し付け怒鳴りつけました。

 「さて、どうしたものか。タッパーだと噛みたくて仕方ないのだし
 他の物に変えるしかないな。そうだ!鉄の両手鍋がある!」
 私は、取っ手が2つ付いた重たい鉄鍋を犬の水入れに使う事に
 決め、取っ手の部分に紐を通し、ベランダの脚にしっかりと
 結びつけました。

 ところが、です。凪は根性のある子供で、小さい乳歯で、
 その紐を根気良くかじり、引き伸ばし、ゆるんだところで、鍋に
 前足を突っ込み、ひっくり返してしまったのです。またもや、
 運動場は水浸し状態、成犬達も岩の上に避難していました。

 ついに、ぶち切れた私は、凪をののしりながら別棟の母の家へ
 走って行き、「お母さん、漬物石貸して!」と叫びました。
 その漬物石を鉄鍋の中へ入れ、水を注ぎ、前よりも丈夫な紐で
 ベランダの脚に縛りつけました。

 「どうだ!これで、ひっくり返せまい!」と、私は勝利を確信し、
 再び母の家へ行き、ケラケラ笑いながら事の成り行きを
 告げました。

 そして、すっきり気分で母の家から戻る途中、何気なく運動場に
 目をやりました。運動場のど真ん中、水浸しで黒くなった土の
 上に、漬物石は、転がっていました。






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